吉松泰子のひとりごと

特定施設ケアプランの検証

1.“尊厳ある暮らし”の実現のためのケアプランとは

特定施設の各事業所のパンフレットには、「御入居者様の尊厳ある暮らしを提供します」「その人らしい暮らしを提供します」といった旨の内容が示されています。ですから、入居を決めた方々も、尊厳を保たれた老後を送り、人生の最後を迎えられるのだなとの思いで施設で生活されています。しかし現状は、特定施設の介護が、お世話のみの生活で終わっているのではないでしょうか。そこが「特別養護老人ホームと特定施設との違いがわからない」と言われている要因になっているのではないのでしょうか。特定施設の存在意義とは、日常のお世話に“尊厳”という付加価値をつけた介護を提供する事だと私は考えます。では“尊厳”とは、そもそもどのような意味なのでしょうか。看護学校の老人看護論において、(尊厳とは、その人が生きてきた過程の中で培われてきた価値観や人生観を理解して、尊重することであり、プライバシーを守ることである)と記されています。つまり、“尊厳ある暮らし”を提供する為には、ご入居者様のこれまでの人生を通じての価値観や人生観を私たち従事者が理解し尊重することで、尊厳を保持できるのですから、まずはご入居者様の人生を理解することが重要なのです。それと大事なのはプライバシーを守る事です。一般社会の中で「うんこは出ましたか?」と大きな声で問いかけませんよね。しかし、介護施設の中では、当たり前のように「オムツは替えましたか?」と職員同士の会話が飛び交っています。これだとプライバシーが守れていないことになります。事例をあげます。84歳の男性。以前は会社の会長として君臨し、俳句の講師、ゴルフはプロ級の腕前。その方が奥様を看取った後、認知症となり、失認、失行、失語の症状にて、歩行、食事も介助が必要となる生活でした。会長としての誇りを持った価値観と、介護されている現状との落差に「自分の人生はこんなものだったのかな…」と人生の敗北感を味わい苦しんでいるのです。介護者が、会長として過ごされた人生を尊重し認め、今の苦しみに寄り添って日常生活のお世話をすれば、その方は尊厳ある暮らしが可能になるのです。ご入居者様はそれぞれに、本当に尊い人生を歩んでこられています。人生の終着点を迎えた方に私たちは寄り添うのです。もう穏やかに過ごして頂きたいと私たちは心から願うのですが、神様は、ボロボロな体、涸れ果てた姿になることを人間に突きつけてきます。“老いる”この人間の最後の苦は避ける事は出来ません。わたし達が出来ることは、人としての“尊厳”を保ってもらうことだけです。貴方の人生は本当に素晴らしかったと賞賛することだけなのです。
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